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地方公共団体におけるピュア型CМ方式活用ガイドライン

 国土交通省は、設計や発注など発注者の業務を補完することを目的としたコンストラクション・マネジメント方式を推奨し「地方公共団体におけるピュア型CМ方式活用ガイドライン」を発行した。

(図版は同ガイドラインから抜粋)

自治体技術系職のマンパワー不足

 多くの自治体が技術系の人材不足に直面している。建築分野では、市町村の営繕関係部局の技術職員の平均人数はわずか5.3人であり、5人未満の市町村が全体の7割を占めるという。小規模な自治体では今後、土木・建築の職員が減少し、公共工事の発注体制が十分に確保できなくなる恐れが出ている。

 

そうした中、需要が高まっているのが、設計や発注など発注者の業務を補完することを目的としたコンストラクションマネジメント(CM)方式だ。この方式では、建設生産に関わるプロジェクトにおいて、コンストラクションマネジャー(CMR)が技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立ち、設計・発注・施工の各段階において、設計や工事発注方式の検討、工程管理、品質管理、コスト管理など各種マネジメント業務の全部または一部を担う。一方の発注者は、CMRの支援・助言・提案等を踏まえて、設計等業務受託者、工事受託者と各種発注方式にて契約し、事業の各段階における重要な判断や決定を下す。

 

国土交通省も、発注者体制の脆弱化を懸念し、CM等契約方式の制度的枠組みを検討してきた。ところがその方式に制度的な位置付けがなく、普及が進まない一因となっていた。そこで同省はCMRに求められる能力と役割、責務等を検討するとともに、発注者が利用しやすい仕組みを検討し、2020年9月に「地方公共団体におけるピュア型CМ方式活用ガイドライン」を発行することでCM方式の周知を図ることとした。

ガイドラインの概要

 ガイドラインは、CM方式の概要、ピュア型CM方式の現状と基本的な枠組み、CM業務の契約図書や活用に当たっての留意事項、CMRの制度上の位置付けなどの解説に加え、「CM業務委託契約約款」と「各段階におけるCM業務役割分担表」を添付資料にしている。

 

ところでCM方式には、大きく分けて「ピュア型」と「アットリスク型」の2種類がある。前者におけるCMRの立場は発注者の補助者・代行者であり、最終的な判断については発注者が責任を負う。一方の後者では、発注者に代わりCMRが工事受注者と直接契約することにより、CMRがマネジメント業務に加え施工に関するリスクを負う。今回公表したガイドラインでは、公共事業で事例の多い「ピュア型CM方式」を対象としている。

高まるニーズ

 CM方式を導入している都道府県、政令市・市区町村は、2007年から増加している。特に市区町村での導入は、約6倍と高い傾向にある。公共工事の発注には、専門性に加えて予算執行や事業の公平性・透明性が求められる。さらに全国画一的な施設づくりが敬遠されるなど、ニーズはますます多様化かつ個別化に向かうと予測される。

そうした中、国土交通省では、発注者体制の補完手法の一つとしてCM方式が適切に活用されるよう、ガイドライン公表に併せて「相談窓口」を開設した。誰もが納得できる建設投資に向け、自治体の活用が期待される。